年末は普段あまり気にかけない場所に目を向ける絶好のチャンス。今年の大掃除は防災対策も一緒にしませんか? 最近は地震や台風、豪雨などによって、日本各地で起こる自然災害に、不安や危機感を感じるようになってきました。いざというとき慌てないよう、備えておきましょう。
■ 家具を動かすこの機会に防災対策
大掃除は普段動かさない家具を動かす良い機会です。災害時に備えて家具や家電などの固定や、飛散・落下防止対策をしましょう。
家具の転倒防止対策
過去の地震では約30%~50%の人が家具の転倒によってケガをしています。家具が倒れると避難が遅れたり、落下した家電から火が出ることも。
家具の固定には壁にネジ止めする「L字金具」が確実です。家電や賃貸など穴を開けられない場合、天井との間に設置する「突っ張り棒」や、床に家具を粘着させる「耐震マット」で転倒を防ぎましょう。
ただし設置の際にイスなどを使うと落ちてケガをすることもあるため、難しい作業は無理せず業者に依頼しましょう。
ガラスに飛散防止フィルムを貼る
窓や食器棚のガラスが割れると、破片によるケガや逃げ遅れの原因になります。「飛散防止フィルム」を貼るとガラスが割れたときに破片が飛び散らないだけでなく、ガラスが割れにくくなり、外から飛んできたものが室内に入るのも防いでくれます。
ガラスが汚れていると貼り付けられないため、大掃除のついでに貼るのがおすすめ。難しければ片付けにも重宝する養生テープを常備しておくとよいでしょう。台風前に×印に貼れば飛散防止になります。
棚の中身や上部を整理する
棚の中にものを詰め込んだり、背の高いタンスの上にものを置いたりしていませんか? そのままでは万が一地震が起こったとき、棚からものが落ちてケガをする危険が。
特にガラス・陶器は重くて割れやすいため、頭の上に落ちたら大変です。思わぬケガを防ぐため、大掃除のついでに収納品を整理整頓しましょう。
また普段から「食器は高い所に収納しない」「食器の下に滑り止めシートを貼る」などの防災対策をしましょう。
■ 外周りの被害を防ぐ準備
街並みを引っ掻き回していく強風と豪雨。準備不足だとケガをしたり、大切なものが壊れてしまうこともあります。台風による強風でものが飛んでくるなどの物理的な被害から身を守るため、大掃除ついでに確認しておきましょう。
雨戸の状態を確認する
強風や豪雨の影響を受けると、雨戸が歪んで上手く閉められないことがあります。
「雨戸の開け閉めはきちんとできるか」「雨戸を閉めたとき、隙間ができていないか」「網戸が破れていないか」を、台風が来る日までに確認しておいてください。雨戸が風で飛んできたものから窓ガラスを守ってくれます。
窓のレールにゴミが詰まっていれば、それも綺麗にしておくと安心です。
ベランダや庭のものを片づける
ベランダや庭、玄関に植木や飾りなどを置いている場合は、台風が来るときだけ、全て片づけておきましょう。「大きなものや植木鉢は端に寄せるか紐で固定する」「小さな植木鉢や洗濯バサミなどは家に入れておく」「小さなゴミや小石が落ちていれば掃除する」など。
台風ではベランダや庭に置いているものが風で吹き飛び、自宅の窓や隣家に被害を与えることもあります。
■ 準備しておきたいもの
台風で被害を受けると、停電が起きたり、洪水で外に出られなくなったりします。いつも通りの生活を送れなくなるので、家の中で暮らしていけるだけの準備をしておきましょう。使用期限切れの防災グッズはいざというときに役に立たないだけでなく、ケガや病気を招くことがありますので、大掃除の時期に見直し・廃棄・補充を行いましょう。
貴重品をまとめておく
家が浸水・倒壊する危険があれば、避難所へ向かわざるを得ません。しかしそのときになって準備を始めていたら避難が遅れ、後で「忘れた」と取りに戻って被害に遭うことも。
いつでもすぐに準備できるよう、あらかじめ貴重品は1ヶ所にまとめておきましょう。「通帳」「印鑑」「保険証・身分証明書」等、家族がいる場合は一人分ずつ小分けにしておきます。
懐中電灯やマッチ、ろうそくの準備
停電時は室内の灯りを確保しないと、周りがみえなくてとても危険です。非常用の灯りとなる「懐中電灯」「マッチ」「ろうそく」「ライター」などを準備しておきましょう。電池が切れていたり、マッチ・ろうそくが劣化していないか事前に確認しておきましょう。
手回し充電機・モバイルバッテリーの準備
不意の停電時に手回し式の充電機があると便利です。ラジオや懐中電灯などの機能がついたものもあり、災害時のために一つ用意しておくと安心できます。スマホ用にすぐ使えるモバイルバッテリーもあると便利です。
階段や廊下、玄関周りにものを置いていませんか? 大掃除のついでに通路の邪魔になるものは整理しておくと安心です。また最寄りの避難所までのルートや、各自治体で公開している防災マップで危険な場所を確認しておきましょう。普段のちょっとした備えが、思わぬ助けになることもあります。
■ 無駄なく無理なく備える「非常食」
非常食は準備と管理が面倒。でもここで紹介するローリングストックなら、日常の中のちょっとした心がけで、いざというときのための備えができます。
賞味期限切れで無駄にすることがない! 食べては補充する備蓄法
非常食といえば3~5年と長期保存が利くものをずっとしまっていましたが、期限が長すぎてその存在を忘れ、気づけば賞味期限を過ぎていた! なんてこともあります。そこで、ローリングストックです。
- 賞味期限1年程度のものを備蓄
- 毎月、少しずつ日常の食事に使用
- 消費した分を買い足す
「食べる→買い足す」を繰り返せば、うっかり賞味期限が切れるのを防げます。
賞味期限が短くてすむ分、食材の選択肢が広がる!
賞味期限が5年の食品はなかなかありません。今までの備蓄方法では、食品の選択肢も少なく、非常食用としてつくられたものを用意するしかありませんでした。
しかし、ローリングストックでは、こまめに食べては回転させていくため、賞味期限は1~2年で十分。そのくらいの期限なら、日常的に食べているものにもたくさんあります。食べ慣れた缶詰やレトルト食品を多めに買ってストックするだけで、それが「もしも」のときの非常食になります。
上手にやりくり! 家計にもやさしいローリングストック
防災のためにと割高な非常食を一度に揃えようとすると、結構な出費になります。しかし、ローリングストックであれば、安売りしているレトルト食品や缶詰などでOK。一度揃えておけば、後は食べた分だけ補充するので、日常の食材を買い置きするのと変わりません。
ドリンク類や缶詰などは賞味期限が2~3年のものが多いので、安売りしている時期にまとめて購入しておけば上手に節約できます。
■ 失敗しないための上手なローリングストック実践方法!
ローリングストックなら食べ忘れがないとはいえ、ついうっかり…ということはあります。レトルト食品など日持ちのする常温保存のものは、忘れられがちです。ある程度ルールを決めて、うっかり忘れを防ぎましょう。
適当にストックしない! 人数・日数をしっかり把握!
日常的に食べているものを多めに買ってストックするだけでは、ローリングストックとはいえません。非常時に備えての食品は、日常の食品とは別に保管すること。「最低3日分、できれば1週間分」が望ましいとされています。
非常食を食べる日をイベント化! 必ず毎月忘れない工夫を!
しっかり管理しているつもりでも、忘れるときは忘れます。そこで、毎月「1日」や「第○日曜日」など、非常食を食べる日を設定すること。缶詰やレトルトをちょい足し食材として料理をしたり、いろいろ試してみるのも楽しいです。
■ 必ず用意したいもの&おすすめの食品
農林水産省が推奨する「これだけは備えたい!」もの
農林水産省は、大規模災害などで食料品不足や避難所不足が起きた場合や、新型インフルエンザなどで外出を控えなくてはならなくなった場合を想定して「これだけは備えたい!」ものとして、以下の4つを挙げています。
水
飲料水としては、体重1kgあたり15mlを目安に用意します。調理用の水も忘れずに。
カセットコンロ
被災経験のある方から「温かいものが食べたかった」と多く聞きます。カセットボンベは1本で60分くらい燃焼するので、温められる食品の数などから、ボンベの数を計算して、用意しましょう。
米
熱源があれば米や湯せんでできるパックご飯を。熱源がない場合を想定し、ご飯の缶詰や水を入れただけでできるアルファー米なども用意しましょう。
缶詰
賞味期限も長く、商品の種類も多いため、備蓄するにはもってこいです。
※水にも賞味期限があるので、他の食品同様、毎月消費しては買い足しましょう。カセットボンベもあまり古くなると錆が出て危険ですので、1年以上経ったものは冬場にお鍋などで使い切りましょう。
食べ慣れた食品、好きな食べものも!
普段から食べ慣れているもの、好きなものをストックしておけば、非常時に多少は気分を上げられます。レトルトや缶詰など、なるべく賞味期限の長いものを選びましょう。お菓子も立派な非常食。賞味期限が長く美容・健康にもよい、ナッツ類・ドライフルーツなどがおすすめです。
最低3日分! プラスアルファがあればなお安心!
救援物資が届くまで3日程度かかることを想定して、最低3日分の備蓄をといわれています。電子レンジでチンして食べるパックご飯やレトルト食品は、ガスで湯せんしても温められます。ガスか電気のどちらかが復旧しても食べられるので、多めにストックしておくとよいかもしれません。
大切なのは続けること。「食べてしまった」「ストックがない」では、いざというときに命取りです。いちいち買い足した品目や期限などを書きこんでいくのは面倒! という方は、付箋に期限を書いて「消費したら剥がす」「買い足したら貼りつける」でOK! それすら面倒な方は、1食分ごとざっくり管理。買い足したときに収納する場所さえ間違わなければ、大丈夫です。自分にあった方法をお試しください。
備蓄の確認や避難経路の確認は習慣づけることが大切です。「大掃除の時期に家族で行う」などのルールを作り、防災意識の向上につなげましょう。自然災害は各地域の最新情報を確認して早めに対策を行い、周囲の状況を総合的に判断し、行動するようにしましょう。